正しく知って、対策をしよう!~ノロウイルス~

 
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今年も早いものであと1ヶ月となりました。
12月はクリスマスや年末など、忙しくも楽しみな季節ですね。
さて今月の【健康づくりWEBかわら版】をお届けします!


正しく知って、対策をしよう!~ノロウイルス~


毎年、冬になると流行しやすいのがノロウイルスによる胃腸炎や食中毒です。年間を通してみられますが、例年12月はノロウイルスの感染者がピークになる時期のため、特に注意が必要です。
そこで今回は『ノロウイルス』に関するお話です。


ノロウイルスとは


ノロウイルスは、嘔気・嘔吐と下痢を主症状とする急性胃腸炎の原因ウイルスのひとつです。手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、嘔吐、下痢、腹痛などを起こします。健康な方は軽症で回復しますが、体力の低下した方や小児においては重症化しやすいので注意が必要になります。感染力は非常に強く、老人ホームや保育所等での集団発生例をみることもあります。


平成29年の食中毒発生状況によると、ノロウイルスによる食中毒は、事件数では、総事件数1,014件のうち214件(21.1%)、患者数では総患者数16,464名のうち8,496名(51.6%)で、病因物質別の患者数では第1位となっています。

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【原因】
<ヒトからヒトへの感染>

  • 患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染した場合
  • 家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫感染等直接感染する場合

<食品からの感染>

  • 食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う者などを含む)が感染しており、その者を介して汚染した食品を食べた場合
  • 汚染されていた二枚貝(カキなど)を、生あるいは十分に加熱調理しないで食べた場合
  • ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合

症状・検査・診断


【症状】
24~48時間の潜伏期間を経て、嘔吐、下痢、腹痛が出現し、多くの健康な方は2日ほどで回復に向かいます。しかし、小児や高齢者、基礎疾患のある方は、脱水症状が体力の低下につながり、直接の原因にはならずとも致命的になることも考えられます。また、吐物を誤嚥し窒息や肺炎の原因となることがあります。

 

【検査・診断】
通常の場合、臨床経過や身体診察、周囲の感染状況などから、ノロウイルスを原因として推定され診療されることが多いです。
その他、医師の診断の補助として用いられる「ノロウイルス抗原検査」(3歳未満・65歳以上は健康保険適用)や、食中毒や集団感染の原因究明などの目的で行政機関・研究機関などが行うリアルタイムPCR法(ウイルス検出・定量検査)などがあります。

 

【治療】
効果のある抗ウイルス剤はないため、通常、対症療法が行われます。特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。


普段から「感染しない」対策を


  • 「手洗い」の徹底
    手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。
    調理を行う前、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後には必ず行いましょう。

手の洗い方(画像をタップ or クリックして拡大)

  • 食品の十分な加熱
    一般にウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせる有効な手段です。二枚貝などを調理する際は、中心部が85℃~90℃で90秒以上加熱しましょう。
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  • 食品取扱者や調理器具などからの二次汚染の防止
    ノロウイルスはアルコール消毒では完全にウイルスの活性を失わせることができません。ノロウイルスに汚染された可能性のある調理台や調理器具の消毒、殺菌には次亜塩素酸ナトリウム:塩素濃度約0.02%(200ppm)を用いるか加熱による処理が有効です。
    ※消毒液は家庭用の塩素系漂白剤を薄めて代用することもできます。

塩素消毒の方法(画像をタップ or クリックして拡大)


感染してしまったら… ~二次感染の予防~


ノロウイルスに感染した場合、感染者は自身の回復を心がけると共に、手洗いや消毒など「感染を拡大させない」意識が大切です。
また、周りで急性胃腸炎の症状が見られた場合は、ノロウイルス感染拡大を防ぐことを念頭に置いた対策を取りましょう。また、吐物や汚染物の処理には、次のように十分な配慮が必要です。

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<吐物やふん便>
紙タオルで静かに拭き取り、処理後その場所を次亜塩素酸ナトリウム消毒液:塩素濃度約0.02%(200ppm)で浸すように床を拭き取る。その後、水拭きをする。


<衣類>
消毒液に浸けた後、単独で洗濯する。


<カーペット>
洗濯用洗剤で拭き取り、水拭きした後、スチームアイロンにて約2分間加熱する。


※処理時は、手袋・マスク・エプロン(使い捨てできるもの)・足カバー(ポリ袋+ゴムでも可)等を装着し、室内は換気する。


最後に・・・


冬場は感染症全般への対策が必要です。常日頃からこまめな手洗いを基本に、自分や周囲の方への感染を予防していきましょう。

消化器科外科医 古賀

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  • 厚生労働省ホームページ ノロウイルスに関するQ&A
    (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)
  • 国立感染症研究所感染症疫学センター
    (https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc.html)
 

PDF版はこちら 【2018年12月】健康づくりかわら版.pdfをダウンロード


 

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