寒さはまだ厳しいものの、暦の上では春を迎えようとしています。 皆様に素敵な春が訪れますように…。 さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!
2月は全国生活習慣病予防月間です。 生活習慣病を予防するために必要なことと聞くと、何を思い浮かべますか?食事、運動、禁煙、減量…どれも大切なことですが、実は睡眠も大切な要素の一つです。
私たちは人生の3分の1を眠って過ごします。人生の多くの時間を費やす睡眠を快適にするためには、何をすればよいのでしょうか?
そこで今回は『睡眠』に関するお話です。
慢性的な睡眠不足は日中の眠気や意欲低下・記憶力減退などを引き起こすだけではなく、体内のホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすことが知られています。
睡眠が不足した場合、レプチン(食欲を抑えるホルモン)の分泌が減少し、逆にグレリン(食欲を高めるホルモン)の分泌が亢進するため、食欲が増大することが分かっています。そのため、睡眠不足は食べ過ぎを招き、肥満の原因となります。肥満は生活習慣病とも深く関係しています。
また、睡眠不足の状態は、交感神経の緊張や糖質コルチコイド(血糖を上昇させるホルモン)の過剰分泌などを招くといわれており、慢性的な寝不足状態にある人は糖尿病や心筋梗塞・狭心症などの冠動脈疾患といった生活習慣病に罹りやすいことが明らかになっています。
日本人の睡眠時間は過去20年間にわたり減少を続けています。 また、睡眠不足だけでなく、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠の病気(睡眠障害)の増加も問題となっています。
睡眠不足や睡眠障害による休養不足はこころと身体に大きな影響をもたらします。病気はもちろんですが、短時間睡眠や不眠が続くと、日中の強い眠気、作業能率や注意力の低下などが出現し、人為的ミスの危険性を増大させます。 私たちが起きている時間のなかで充分に覚醒して行うことができる時間は12時間~13時間程度であり、連続して15時間以上起きている状態は「酒気帯びの状態」と同程度の作業能力になることが知られています。
色々と工夫をしても睡眠の改善効果がないときや、不眠・日中の眠気が1ヶ月以上続くときには、何らかの睡眠障害の可能性も考え、睡眠外来などへ相談するようにしましょう。
「快適に眠りたい!」こんなときには、何に気を付けるとよいのでしょうか?生活の中で気を付けることを紹介します。
規則正しい生活を送る
体の中には体内時計があり、睡眠のタイミングを決めるだけではなく、前もってホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えてくれます。 快適な睡眠を得るためには、布団に入る時間や食事の時間などを毎日なるべく一定にし、体内時計を整えることが大切です。
運動習慣をもつ
運動習慣がある人には不眠が少ないことがわかっています。 運動は1回だけでは効果が弱く、習慣的に続けることが重要です。 ただし、激しい運動は逆に睡眠を妨げますので、負担が少なく長続きするような有酸素運動(早足の散歩や軽いランニングなど)が効果的です。 なかでも効果的なのは夕方から夜(就寝の3時間くらい前)の運動です。眠気は体温が上昇した後、下降するときに生じやすいといわれているため、就寝の数時間前の運動によって体温を上げることがポイントです。
お風呂に入る
運動と同じく、体温を上げ、眠気を生じやすくする効果があります。深い睡眠をとるには就寝直前の入浴が良いとされていますが、寝付きを悪くしてしまう心配があります。寝付きを優先させると、就寝の2~3時間前の入浴が理想です。
光で体内時計を整える
光の効果は体内時計を24時間に調節することにあります。ヒトの体内時計の周期は24時間より長めにできているため、長めの体内時計を毎日早めてあげないと、ずるずると生活が後ろにずれてしまいます。 朝の光には後ろにずれる時計を早める作用があります。起床直後の光が最も効果的なので、起きたらまずカーテンを開けて自然の光を部屋の中に取り込みましょう。
なお、朝の光と反対で夜の光は体内時計を遅らせる力があり、夜が更けるほどその力は強くなります。就寝前には強い光を浴びることをさけ、照明を暖色系の明かりにするなど工夫しましょう。 また、スマートフォン、パソコンなどのブルーライトも交感神経を刺激し眠りを妨げることがあるため、できるだけ避けるようにしましょう。
時間によって食べるものを工夫する
しっかり朝食をとることは朝の目覚めを促します。それによって自律神経にめりはりがつき、睡眠の覚醒のリズムも整いやすくなります。一方、就寝間近の夕食や夜食は、消化活動が睡眠を妨げるため、出来るだけ控えましょう。 また、コーヒー・緑茶などカフェインが含まれる飲食物は覚醒作用があります。敏感な人は就寝の5~6時間前からできるだけカフェインを摂取しないようにし、ノンカフェイン飲料にしてみましょう。
睡眠は休養だけではなく、記憶・気分調節・免疫機能の増強など、私たちのこころと身体のさまざまな機能に関連しており、しっかり眠ることは健康の基本です。 最も身近な生活習慣である睡眠にも目を向け、快適な毎日を送りましょう。
(参考資料)
※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。
「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局) http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou2.pdf
睡眠と生活習慣病との深い関係,eヘルスネット,厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html
健やかな眠りの意義,eヘルスネット,厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-001.html
快眠と生活習慣,eヘルスネット,厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html
新ストレスマネジメントハンドブック4働く人のためのよりよい睡眠について 木村理砂,公益社団法人全国労働衛生団体連合会
NHK解説アーカイブス「睡眠負債に気をつけよう」(視点・論点) https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/272804.html
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