いよいよ本格的な夏が到来する時期になってきましたね!
今年の夏のご予定は決まっていますか?
さて今月の【健康づくりかわら版】をお届けします!
運動神経の鍛え方
皆さん、運動神経という単語を耳にすることがあると思います。
あの人は運動神経がいいね!逆に、あの人は少し運動神経が悪いね。などといった会話を一度はしたことがあるのではないでしょうか。
そこで今回は『運動神経とその鍛え方』に関するお話です。
運動神経って何?
運動神経をウィキペディアで調べてみると、『運動神経(うんどうしんけい、ラテン語: nervus motorius)とは、体や内臓の筋肉の動きを指令するために信号を伝える神経の総称である。頭部では脳神経、体部では脊髄神経として、中枢から離れて末梢に向かうので、遠心性神経という名称でも呼ばれる。(原文ママ)』とされています。
難しいですね…。しかし、ここで説明されている「運動神経」は、皆さんがご存知の「運動神経」のことではないのです!一般的にいわれている「運動神経」とは何を指すのでしょうか?
いわゆる「運動神経」
人が手足などの体を動かす時は、脳などの神経が体の神経回路を通して筋肉に指示を出します。その指示が筋肉に伝わり、「自分が思ったとおりに体を動かせること」がいわゆる「運動神経が良い」ということになります。つまり、運動神経とは筋肉だけでなくこの神経回路もよく発達していることが重要だといえます。
スクワット等の筋トレだけやっても、神経回路を向上させる運動をしないと、実は運動は上手にはならないのです。
思ったとおりに動くために必要なのは?
運動神経を上達させるには、自分の体が行っている動きを理解することが大事です。人が目的を持って動くときは単一の動作ではなく、いくつかの動作が複合的に起こっています。
例えば、遠くの物を取るときには、「手を伸ばす」と「体を捻る」という動作が同時に起こっています。
このように、いくつかの運動を同調してスムーズに動く能力(連結能力)を含めた7種類の能力をコーディネーション能力といいます。
●リズム能力
動きをまねしたり、動くタイミングを上手につかむ能力
●バランス能力
重心の移動があっても姿勢を正しく保ち、崩れた姿勢を立て直す能力
●変換能力
まわりの状況に合わせて、素早く動きを切り替える能力
●反応能力
刺激に対して素早く、正確に対応して運動する能力
●連結能力
単一の動きを同調させスムーズに体を動かす能力
●定位能力
相手や自分の位置関係を正確に把握する能力
●識別能力
道具などを上手に操作する能力
日本で一般的にいわれているコーディネーション能力とは、「運動学的な五感といわれる知覚、聴覚、平衡感覚、皮膚感覚、筋感覚などの感覚受容器で察知し、そこから得られた情報を脳で収集し、運動効果器に指令を出すといった一連の過程をスムーズに行う能力のことをいう(2006東根)。」とされています。
少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に言ってしまえば、先述した7つの能力を使いこなすことが大事だということですね!
コーディネーション能力を高めるために
いわゆるコーディネーション能力が子どもだけでなく、大人にも重要であることは、容易に想像がつくと思います。健康・安全といった観点からも、仕事の中で起こり得る不意なケガを未然に防ぐために必要な能力であるといえます。
「毎日ウォーキングをしているから大丈夫!」、「スクワットが日課だから運動はしている」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、単一のトレーニングでは、様々な状況に対応するための能力を鍛えることは難しいと考えられています。例えば、ウォーキングやランニングでは体の持久力を鍛えます。膝を屈伸するスクワットや段差を上り下りするステップ運動は主に筋力を鍛えるトレーニングです。つまり、単一の運動を繰り返している間は、「持久力だけ」「筋力だけ」を鍛えていることになります。
また、海外では、その目的によって実施する運動を変える、または目的に応じた複数種類の運動を実施することで、効果が上がると報告されています。
「何もないところで躓くようになった」「人や物によくぶつかりそうになる」という方は、ウォーキングやスクワットではなく、体を思うとおりに動かす能力、すなわちコーディネーション能力を鍛える必要があると考えられます。
それでは、「躓いて一歩踏ん張るための運動神経」や「足場の悪い所でバランスをとる運動神経」などのいわゆるコーディネーション能力を鍛えるためには、どんな運動があるのでしょうか。
例えば、2人1組で「じゃんけん」を足でやってみましょう。
1)片方はいつも通り、手を使います。
2)もう一方は椅子に座ったまま、「パー」は両足を真横に開く、
「グー」は両足を閉じる、「チョキ」は前後に開く、という形で勝負してみましょう!
いかがでしたか?手を使うじゃんけんと比べて慣れない動作をするため、間違えて笑いがでてきませんか?
このように、頭を使いながら、同時に体を動かし、そして楽しみながら運動をすることでコーディネーション能力が高まるといわれています。
最後に・・・
現在、子どもスポーツの分野を中心として、コーディネーション能力を高めるための運動を学ぶ場が、様々な団体から提供されています。また近年は高齢者の介護予防にも取り入れられ、認知症の予防にも効果的だと話題になっています。
普段運動をされていない方はもちろんのこと、よく運動をされている方にも「プラスアルファ」の要素として、コーディネーショントレーニングを取り入れ、一段と健康な体を手に入れましょう。
※今回の記事は次の資料を参考・引用して作成しました。
- 非特定営利法人日本コーディネーショントレーニング協会HP
http://jacot.jp/ - 東根明人著:体育授業を変えるコーディネーション運動65選-心と体の統合的・科学的指導法.明治図書.2006
- 運動神経の科学 (講談社現代新書) 新書 2004/9/18 小林寛道 (著)
- Wikipedia 運動神経 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E5%8B%95%E7%A5%9E%E7%B5%8C
- 平成20年度 神奈川県立体育センター研究報告書
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/2413.pdf - 滋賀大学大学院教育学研究科論文集 第14 号,pp. 117-127,2011小学校体育科における体つくり運動領域の「多様な動きをつくる運動」の(教科内容) に関する実践的研究 北村佳史
http://libdspace.biwako.shiga-u.ac.jp/dspace/bitstream/10441/9648/1/kenkyukaronbunshu14pp.117-127.pdf
PDF版はこちら 【2017年7月】健康づくりかわら版.pdfをダウンロード
一般財団法人日本予防医学協会
HP https://www.jpm1960.org/
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