まだまだ暑い日が続いていますが、夏バテしていませんか? 健康管理に留意して、残暑を乗り切りましょう。 さて今月の【健康づくりWEBかわら版】をお届けします!
チョーーー!高齢JAPAN! ~認知症予防で幸齢に~
ここ最近、高齢者ドライバーによる交通事故のニュースも相次ぐようになってきましたが、2019年8月に厚生労働省が発表した2018年の日本人の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳で男女ともに過去最高を更新しました。 厚生労働省が2015年に発表した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)によると日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症と推計されています。 さらに、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占めると見込まれています。 つまり、認知症は加齢とともに誰にでも起こり得る身近な病気と考えてもいいのかもしれません。 そこで今回は『認知症』に関するお話です。
【アルツハイマー型認知症】
認知症の約70%を占め、アミロイドβたんぱくという物質が脳内に蓄積することで起こります。神経細胞が死滅することによる海馬の委縮から記憶障害が起こり、その後さまざまな症状が現れてきます。
症状1. 記憶障害/最近の出来事から忘れていく症状2. 実行機能障害/計画や順序だった行動は困難になる症状3. 見当識障害/時間や場所、自分自身や周囲をきちんと
____ 認識できない症状4. 失語/上手く喋ることができず、相手の言葉も理解
____ できない症状5. 失認/目の前のものが何であるかを認識できない症状6. 運動機能障害/日常生活に必要な動きができなくなる
【脳血管性認知症】
脳卒中に伴って起こり、突然発症したり、急激に悪化したりします。
症状1. マダラな症状/もの忘れはあっても判断力や理解力が
_ __ _ 低下していないなど症状2. 意欲の変化/意欲の変動が大きい症状3. 感情のコントロール/感情の起伏が大きくなる症状4. 感覚の乱れ/上下左右や空間の把握に支障をきたす
その他、レビー小体という異常なたんぱく質の塊が脳に蓄積する「レビー小体認知症」や、脳の前頭葉・側頭葉が障害されて起こる「前頭側頭型認知症」があります。
65歳未満の人が発症する認知症を総じて「若年性認知症」と呼びます。慢性疲労やうつ症状、更年期障害と症状が似ていることから、発症していてもなかなか気づかず診断が遅れてしまうこともあるようです。 若年性認知症は、女性よりも男性の方がなりやすく、平均発症年齢は51歳とするデータもあります。若年性認知症は、「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」に大きく分けられますが、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血による脳血管性認知症のほうが多いようです。
認知症初期のさらに前段階として、MCI(軽度認知障害)があります。MCIのすべての方が認知症になるとは限りませんが、放置すると年間10~15%の方が認知症に進行するといわれています。 MCIの段階で発見し、早めの対策を行っていくことが重要です。
~MCIの特徴~
年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
本人または家族によるもの忘れの訴えがある
全般的な認知機能は正常範囲である
日常生活での動作は自立している
認知症ではない
~MCIの予兆~
【外出時】 外出に消極的/服装に無頓着/約束を忘れる【料理時】 手の込んだ料理をしなくなった
_____ 味付けが変わった/鍋を焦がすようになった【仕事時】 同じ質問や確認を繰り返す/新しい機器や
_____ ソフトの使い方を覚える気がしなくなった【その他】 洗濯物を干し忘れる/財布に小銭が貯まるよう
_____ になった
など
脳科学者である川島隆太先生(東北大学加齢医学研究所所長)は、“加齢により経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること”と定義した「スマートエイジング」を提唱する中で、「認知」「運動」「栄養」「社会性」の4条件が満たされる必要があるとしています。
認知:脳を使う習慣。特にワーキングメモリーを意識する。
運動:身体を使う習慣。有酸素運動と年齢に応じた筋力トレーニング。
栄養:バランスのとれた食生活。中年期は過栄養が寿命を縮め、老年期では低栄養が心身機___ 能を低下させる。特に、朝ご飯が大事。
社会性:人と関わる機会や習慣を持ち続けること。新しいことに挑戦することも必要。
食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めるといわれています。減塩、禁煙、運動に取り組み生活習慣を規則正しいものにしていくことは基本中の基本です。特別な“何かすること”“何かをやらないこと”といった予防策があるのではなく、何事もバランスよく健康的な生活を心掛けることが認知症の予防につながるといえます。
人生100年時代を迎え、「健康寿命」「労働寿命」という言葉もキーワードになってきました。雇用制度のあり方も大きく変わり始めている昨今、私たち労働者の働き方も多様化してきています。 できるだけ長くイキイキと健やかに働くためにも、心と身体の健康を意識した今の生活が、将来の自分への投資になるといっても過言ではありません。高齢社会を幸齢に生きていくために、今から出来ることを一つ一つ大切にしていきましょう。
※参考資料
厚生労働省/平成30年簡易生命表の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/index.html
厚生労働省/「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」について https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html
認知症ねっと https://info.ninchisho.net/
安心介護 https://ansinkaigo.jp/
川島隆太、村田裕之 年を重ねるのが楽しくなる「スマートエイジング」という生き方 扶桑社 2012年
公益財団法人健康・体力づくり事業財団/「認知症予防はカラダづくりから!」 http://www.health-net.or.jp/syuppan/leaflet/index.html
きょうの健康(2017.08)/「防げ!認知症」
一般財団法人日本予防医学協会 HP https://www.jpm1960.org/ 本メールマガジンに掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。 Copyright (c) The Association for Preventive Medicine of Japan. All rights reserved.
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